DX浸透とヒヤリハット対策を後押しするマンガ活用施策 ――武州製薬が仕掛けるビジュアルコミュニケーション戦略

武州製薬株式会社

DX推進のための全社のマインドセットを目的としたマンガと、製造工程における逸脱防止(ヒヤリハット)を目的としたマンガの2タイトルを導入いただいた武州製薬様にお話を伺いました。DX推進マンガは、4ページ×3話の連載形式で、同社の社長や担当者も登場し、読者が自分ごととして捉えやすい構成になっています。一方、逸脱防止マンガは誰でも隙間時間に読みやすいタッチで、1テーマに対し1ページの短編構成としました。マンガを導入した狙いや工夫点、効果をお伺いしました。

  今回、DX浸透マンガと逸脱防止マンガ(ヒヤリハット)の2タイトルを導入いただきましたが、それぞれマンガを導入される前の課題はどのようなものだったのでしょうか?

<DX推進について>推進の過程において、従来の紙ベースの業務フローから、デジタル化/システム導入による業務改革が必須となりました。しかし、年代や担当業務によってDXへの理解度にばらつきがあることが課題でした。

特に間接作業に携わる社員は現状を変えることに対する抵抗があり、変えるためのリソースも足りないという状況。結果として改革は起きにくく、DX推進には厳しい雰囲気がありました。なので、まずは「DX認定を取りにいく」という前提で、社内の雰囲気づくりが必要だと考えました。

<逸脱防止について>医薬品製造では、わずかな逸脱(手順の逸脱、記録漏れなど)が品質問題に直結する可能性があります。従来は、文字中心の安全教育資料やマニュアルで逸脱防止を啓発していましたが、内容が複雑で現場スタッフの理解度にばらつきがありました。

ヒヤリハット事例の共有も報告書の読み合わせでは実感を伴わず、他人事として受け取られることが多かったのが課題でした。文字がずらずら書いてあるだけで読んでいてもつまらないし、伝わっていないな、と。

  課題解決のために、マンガを選択したきっかけは何でしょうか?また、マンガの他に取り組んだ施策はございましたか?

DX推進と品質文化の醸成には、全社員の理解と行動変容が不可欠です。文字や数字だけでは伝わりにくい「なぜ必要か」「どうすべきか」という背景や心理的な納得感を、ストーリー性を持って伝える必要がありました。

そんな折、展示会でトレンド・プロのブースの前を通ったときに「おっ!」と思いましたね。私自身もマンガは好きですし、マンガであれば複雑な概念を視覚的かつ感情的に理解させることができる、年代や職種を問わず浸透しやすいメディアだと判断しました。

他に取り組んだ施策としては、システム導入時の動画研修やDXワークショップ、関係者による逸脱防止会議などです。社内報での定期的な事例紹介や、社外向けの広報活動も行ってきました。マンガはこれらの施策の「入口」として、全社員に共通の理解基盤を作る役割を担わせました。

 

マンガ活用で実現したかったことや、ターゲット層、こだわったポイントは何でしょうか?読者に求める態度変容などもございましたらお聞かせください。

実現したかったこととして挙げられるのは、全社員(特に現場スタッフ)がDX導入の目的と自分たちの役割を理解すること。逸脱防止の重要性を「知識」ではなく「実感」として身につけること。そして、年代や職種を超えた共通の品質文化の醸成です。

主なターゲット層は製造現場の作業者(20代~60代)や品質管理部門の社員ですが、管理職や事務職も含め社員全員に読んでもらうことが目的でした。まずは「マンガ良いね!」というところから、「DXってこういうものなのか」と話題になるところからスタートできればいいな、と。

また、社員教育の新たなツールの可能性として、経営層へのアピールにもマンガが活用できると思いました。10〜20年先でも共通する教育は会社の資産になりますよね。

そのためにこだわったポイントは、登場人物の設定です。実際の社長や担当者に似せたキャラクターを設定し、「自分たちの会社の話」として親近感を持たせようと考えました。次に、ストーリーの現実性。実際に起こりうる逸脱事例やDX導入時の戸惑いを描き、「他人事ではない」という認識を促したいと考えました。

さらに、メッセージの明確性にもこだわりました。各マンガの最後に読者に求める具体的な行動を明記し、態度変容につなげています。DX浸透マンガでは「新しいシステムは自分たちの仕事を楽にするためのもの」という前向きな認識を持ってもらおうと。「とりあえず話は聞いてみよう」という雰囲気にはなりましたね。

逸脱防止マンガにおいては、「誰にでも起こり得る」という当事者意識と、逸脱対策への積極的な参加につなげることが目的でした。管理職から作業者まで、幅広い層から好感触を得ています。わかりやすくインパクトがあるのは、やはりマンガならではですね。

 

ートレンド・プロは展示会で知っていただいたかと存じますが、選ばれた決め手は何でしょうか?

展示会でトレンド・プロのマンガ制作事例を拝見し、製造業の特性を理解した上での提案力に惹かれました。特に決め手となったのは、業界知識です。DX推進に加え、医薬品製造のGMPの重要性を理解した上で、わかりやすいストーリーに落とし込む力があると判断しました。

当社の社長や現場リーダーをキャラクターモデルにするなど、カスタマイズへの柔軟な対応姿勢も魅力でしたね。また、豊富な制作実績と成功事例に対する信頼感や打ち合わせ時の丁寧なヒアリング、こちらの意図を正確に理解しようとする姿勢なども大きな決め手となりました。

 

ーマンガの制作過程はいかがでしたでしょうか?

 初回ヒアリングで当社の課題や目指す方向性を的確に理解していただき、構成案の精度が高かったです。キャラクター設定や場面設定についても複数の案を提示いただき、選択肢が豊富でした。特に逸脱マンガでは、最初に出てきたシナリオがかなり意図を汲んでくれた内容だったので、あとの動きもスムーズでした。

DX推進マンガでは、最初にDXの教え役キャラクターをご提案頂いていたんですよね。結果的には登場しない流れになりましたが、すべてトレンド・プロにお任せすれば良かった、と思いました。それくらい完成度が高かったです。

 

ー制作過程において難しかった点・工夫した点はございましたか? 

マンガ家さんの選定には一番悩みましたね。これは実際に描いていただかないとどうしてもわからない点ですので。万人受けしたほうがいい、スタイリッシュにすると内容とそぐわない、などさまざまなことを考慮して選定しました。

また、逸脱マンガに関しては、医薬品製造の専門用語や手順をどこまで詳しく描くかのバランス調整が難しかったです。複数回の修正依頼に対して柔軟に対応してくれたことで、最終的に満足度の高い成果物になりました。

 

ーマンガを拝見しましたが、業界について全くわからない状態でも非常にわかりやすくまとめられていました。

その感想はありがたいですね。「全く知らないけど頭に入る」ということがとても大事です。これがマンガの力ですね。こちらも楽しく作ることができました。シナリオが絵になるのを毎回心待ちにしていたほどです。

マンガ掲載号の社内報閲覧数は通常の6倍に

ーマンガの反響はいかがでしたか?

デスクワークメインの社員からは、「自分たちの会社の話で且つマンガだと、他の研修資料よりスムーズに頭に入ってきた」「身近な話なので、自分たちも気をつけようという気になった」「マンガなら新入社員にも説明しやすい」といった声が寄せられました。

具体的な反響としては、DX浸透マンガ掲載号の社内報閲覧数は通常号の約6倍の2400閲覧となりました。第2弾の逸脱防止マンガ掲載号は、配信した瞬間に700閲覧を超えている状況です。 通常は、数ヶ月かけて400ほどの閲覧数なので、かなり早いスピードです。読んでほしい層には届いたのではないでしょうか。

ー嬉しい反響ですね。工場の方はどのようにしてマンガを読んでいらっしゃいますか?

製造現場の事務エリア78箇所にマンガを貼り出してみました。現場においてはネットを開いて社内報を読むということがなかなか難しいので、貼り出しが効果的と感じましたね。

マンガを他に活用したい、という意見も多く出ています。新入社員研修の導入教材として活用する案も出ていますし、取り組み自体にインパクトがあるので、特に逸脱防止への前向きな活動の一つとして社外アピールにもつながるのではないでしょうか。

ー今後のマンガ活用についてはどのようにお考えでしょうか?さらなる目標や、興味のある手法・媒体・コンテンツ等もお伺いできればと思います。

目標としては、まず継続的な啓発です。現在のマンガを定期的に社内報で再掲載し、継続的な意識醸成を図りたいですね。そのほか、コンプライアンスや環境・安全衛生に関する啓発、経営方針の周知など、新テーマにもマンガ活用が展開されるよう仕掛けていければと思います。

また、マンガをアニメーション化してオンライン研修プラットフォームに組み込むこともやってみたいです。マンガのQRコードから詳細な解説動画や関連資料にアクセスできる仕組みをつくったり、事例マンガを冊子化して新入社員に配布などができれば、さらなる理解促進につなげていけるのではないかと。

今後は、マンガを中心とした「ビジュアルコミュニケーション」を、人材育成・組織文化醸成の重要な柱として位置づけていくことが中期的な展望です。

武州製薬株式会社

武州製薬は、埼玉県に本社を置く医薬品製造受託企業です。医療用医薬品から一般用医薬品まで、幅広い製剤形態の受託製造に対応しています。GMP準拠の最新設備と高度な技術力を備え、顧客のニーズに応じた高品質な医薬品製造を実現。品質管理と安全性を最優先とし、医療現場を支える信頼できるパートナーとして、業界の発展に貢献しています。

 

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