
「顧客体験価値」をデザインするための4つのステップと実践ヒント
製品やサービスがあふれる現代において、顧客がブランドを選ぶ基準は大きく変わってきています。これまでは価格やスペック、利便性といった指標が重視されていました。しかし、近年は、これら以外に特に重視されているのが「顧客体験(Customer Experience:CX)」です。
これは、商品への関心から購入・使用・アフターフォローまでの顧客の一連の体験を指す用語です。そして、ここからさらに踏み込んで、顧客体験から得られる価値のことを「顧客体験価値(Customer Experience Value)」と呼んでいます。
たとえば、今やコーヒーはコンビニでも手軽に買える時代です。それでも特定のカフェチェーンを選ぶ消費者が一定数いるのは、味や香りだけでなく、空間・接客・居心地などの体験が価値として認識されているからです。これらが「顧客体験」、そしてそこから得られる満足感が「顧客体験価値」です。
それでは、どのようにすれば顧客体験価値を高め、顧客に選ばれ続けるブランドになれるのでしょうか?本記事では、CXをデザインするための4つのステップと、それぞれの段階で実践できるヒントを具体的にご紹介します。
顧客体験価値をデザインする4つのステップ
STEP 1:顧客理解〈共感〉
顧客体験価値をデザインするための第一歩は、顧客を深く理解することです。単なる属性データにとどまらず、「何に困っているのか」「どんな感情で商品やサービスに触れているのか」まで掘り下げる必要があります。
顧客理解のための手法は、ペルソナ設計・顧客インタビュー・行動観察など、リサーチ手法にはさまざなものがあります。ここで重要なのは「表層のニーズ」ではなく「本音」に迫ることです。
たとえば、保険商品の購入動機が「万一への備え」であったとしても、その背景には「家族を守りたい」「将来への漠然とした不安を解消したい」といった感情が潜んでいます。
この、顧客の本音のことを「インサイト」と呼ぶことがあります。インサイトとは「顧客自身も気づいていない、無意識の本音や欲求」を指す用語です。
顧客のインサイトを明らかにするために有効なのが「共感マップ」や「カスタマージャーニーマップ」です。これらを用いることで、顧客の行動や感情の変化を可視化しやすくなります。その結果を社内で共有することで、顧客理解のための共通認識を築きやすくなるでしょう。
STEP 2:体験設計〈設計〉
次のステップでは、顧客理解を踏まえたうえで、どのような体験を提供するかを設計します。ここでは「サービスをどう提供するか」ではなく、「顧客がどう感じるか」を起点に考えるのがポイントです。
「予約から利用後のフォローまで、どのタッチポイントでどんな感情を抱いてもらいたいか」を逆算し、全体のCXを構築していきます。ユーザーの期待や不安を把握した上で、それに対する適切なアクションを設計しましょう。
ここで重要なのは、カスタマージャーニーに沿って、各フェーズごとに顧客の「期待」「不安」「感情変化」を整理することです。カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスの存在を認知し、購入や利用、利用後のリピートなどに至る一連の流れを指すものです。
この概念を利用し、情報を整理することで、設計すべき体験のポイントが見えてきます。
また、部署を超えた「サービスデザイン」の視点も欠かせません。マーケティング、開発、カスタマーサポートなどの部門が連携することで、CXを協働で設計する体制が求められます。
STEP 3:体験の実装〈提供〉
このステップは、設計した体験を実際の接点に落とし込んでいくフェーズです。WEBサイトのUI設計、スタッフの接客品質、導線の設計など、CXはあらゆる場面で表現されます。
ここでの注意点は、「マニュアルどおりの接客」や「機械的な対応」に頼らないことです。現場スタッフが顧客体験価値とはなにかを理解した上で、状況に応じて柔軟に対応することが重要です。
そのために重要なのは、「体験コンセプト」をチーム全体で共有することです。これは、「私たちのサービスで、顧客にどのような感情を持ち帰ってほしいか」という指針です。マニュアルではなく価値観を共有することで、一貫した体験が実現しやすくなります。
STEP 4:体験の検証と改善〈改善〉
CXは「設計したら終わり」というものではありません。常に顧客の声を拾い、改善し続ける姿勢が求められます。NPS(Net Promoter Score)やVOC(Voice of Customer)などの指標を活用しながら、定性・定量の両面から現状を分析し、次の改善アクションへとつなげていきましょう。
これを実践するためには、CX向上のためのKPIを設定し、定期的にチームでレビューする仕組みを作るとよいでしょう。例えば、「初回購入からリピートまでの感情曲線」などを指標にすれば、顧客体験価値のための施策がどれくらい成功しているのかが可視化され、理解しやすくなります。また、顧客のフィードバックをリアルタイムで現場と共有するフィードバックループの構築も、体験向上に欠かせません。
「語りたくなる体験」は、顧客が自発的にブランドの広告塔となる大きな資産です。
顧客体験設計を成功に導く3つの視点
▷全社視点の共有
CXはマーケティング部門だけの課題ではありません。経営層、現場、広報まで全社が同じCXゴールを共有することで、組織全体の一貫性が生まれます。理念やパーパスとCXを連動させることで、顧客との信頼関係も深まります。
▶︎ストーリービジュアル化
企業の世界観や提供価値をストーリーとして可視化することで、チーム内での認識を揃えることができます。最近では、マンガを使ってカスタマージャーニーや理念を表現する手法も増えています。これはビジュアルで直感的に伝えられるため、非常に効果的です。
▷柔軟性をもつ組織文化
顧客の価値観や生活スタイルは常に変化しています。それに応じてCXも“常に進化”していかなければなりません。変化に柔軟に対応できる組織文化を醸成し、継続的に学び改善していくことが、CX成功の鍵です。
今回は、顧客体験価値をデザインするための具体的なステップを4つに分けて紹介しました。「顧客体験価値」は、単なるマーケティング戦略ではなく、企業全体で取り組むべき長期的な価値創造の営みです。
「共感→設計→提供→改善」の4ステップを通じて体験を磨き続けることで、顧客は商品やサービスのファンとなり、長く企業とつながり続けてくれます。そしてその結果として、ブランドの競争優位性は確立されていくのです。
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