
「顧客体験価値」と価格競争──選ばれるブランドになるために必要なこと
「他社より安くしないと売れない」「価格を下げるしか選択肢がない」——そう感じたことはありませんか?また、そう思い込んでいませんか?
中小企業やEC事業者にとって、価格競争は避けては通れないように思えます。大手企業が規模を活かして打ち出す低価格戦略に、中小企業やEC事業者が対抗しようとすれば、利益が圧迫されてしまい、事業の持続性が難しくなる可能性すらあります。
しかし、いま注目すべきなのは「価格」ではなく「体験」です。
本記事では、価格ではなく体験で選ばれるブランドになるために欠かせない考え方、「顧客体験価値(CX:Customer Experience Value)」に焦点を当て、価格競争から脱却するための実践的な戦略を紹介します。
顧客体験価値とは何か?
「顧客体験価値」とは、商品やサービスを通じて顧客が感じる体験の価値を指します。単に商品のスペックや価格ではなく、「どのように購入したか」「店舗やECサイトでの対応が心地よかったか」「ブランドとの関係が自分にとって意味があると感じられたか」など、五感や感情に訴える体験の質が、顧客にとっての満足や信頼の源泉となります。
なぜ今、「体験」が重要なのか?
現代では、消費者は大量のモノやサービスに囲まれています。価格や機能が似通った商品が無数にあるため、購入を決める基準は「いかに自分にフィットした体験を得られるか」に移行しつつあります。
顧客体験価値を重視したブランドには、以下のような特徴があります。
・価格に左右されにくい顧客基盤の構築
・顧客の継続購入やブランド推奨(口コミ)の増加
・ロイヤルティの向上によるLTV(顧客生涯価値)の最大化
なぜ多くの企業が価格競争に陥るのか?
特に中小企業やEC事業者は、リソースの限られた中で「価格で勝負する」方法を選んでしまう傾向があります。機能や価格で大手と勝負することは、最初から消耗戦を選ぶようなものです。仮に一時的に顧客を獲得できたとしても、利益が出づらく、ビジネスの継続は難しくなります。
それでは、どうすれば価格競争から抜け出せるのでしょうか?
その答えは、「顧客体験価値」を高めること。「価格よりも体験で選ばれるブランド」になれば、価格の優劣に左右されず、持続的な成長の道がひらけます。
顧客体験価値を高める4つの戦略
ここからは、価格競争を脱し、体験価値で勝負するための具体的なアプローチを4つ紹介します。
1)ニッチ市場・ペルソナの明確化
「誰のためのブランドか?」が不明確なままでは、体験価値の設計もぼやけてしまいます。まずは、特定の顧客層に絞ることが重要です。
例えば、「忙しい共働き世帯」「30代女性の育児世代」「ECサイト初心者の高齢者」など、明確なペルソナを設定することで、彼らの悩みや期待に寄り添った体験設計が可能になります。
2) ブランド戦略と体験価値の連携
ブランドは「ロゴ」や「商品名」ではなく、「顧客との関係性の約束」です。
統一されたビジュアル・トーン・ストーリー・接客スタイルを通して一貫したブランド体験を設計します。SNSの投稿、問い合わせ時の対応、パッケージデザインに至るすべてが「このブランドらしい」と感じられることが、顧客の記憶に残る体験を生みます。
3) 顧客との接点を緻密にデザイン
接点は、顧客体験価値を形づくるタッチポイントです。ECサイト事業者であれば以下のような工夫が可能です。
・バーチャルストアによる“リアルに近い購入体験”の提供
・チャットボットやLINEでの迅速なサポート
・SNS上での双方向コミュニケーション
実店舗であれば、香り・照明・接客のトーンなど、五感に訴える場づくりも体験価値を高める鍵となります。
4) ロイヤルティ施策の強化
初回購入だけではなく、その後の関係性を設計することが体験価値の本質です。
・会員制度による特別感の演出
・購入後のフォローアップやメンテナンス情報の提供
・顧客データに基づいたパーソナライズ施策
・口コミ・レビュー投稿を促す仕組み作り
これらに代表される継続的なアプローチが、顧客の満足と信頼を深め、長期的なブランド支持につながります。
顧客体験価値で差別化した事例
ここでは、顧客体験価値でブランドや企業の差別化に成功した事例をいくつか紹介します。
■NAOT JAPAN
NAOT JAPANは、イスラエル発の革靴NAOT(ナオト)を輸入・販売する店舗です。奈良市に実店舗「NAOT JAPAN」を構えるほか、ECサイトもあります。
ECサイトで靴を購入する際に心配なことといえば、足の甲や幅など、細かい部分でフィットするか、履き心地は気に入るかといった点ではないでしょうか。同店舗はこれらの不安を解消するため、消費者が自ら足の長さや幅周り・甲周りなどのサイズを測り、それらをメールで店舗に伝えることで、フィットする靴を提案してもらう仕組みを採用しています。他のECサイトと比べて店舗担当者とのやりとりは増えますが、満足度の高い買い物体験ができると評判を得ています。
その他、ECサイトでも普段接客時に使っているような言葉遣いを心掛ける、座談会形式の読み物を提供するなどの施策を行っています。
■もち吉
もち吉は、福岡県直方市に本社を置く米菓子の製造と販売を行う老舗企業です。全国に200を超える店舗を構える他、ECサイトもあります。
もち吉のEC戦略の特徴の一つは、顧客の電話番号とひも付けたLINEのターゲティング広告を活用していることにあります。過去に注文した顧客に対して、LINEのニュース画面などに広告配信をすることで、メインターゲット層の40〜60代からのリピート購入につなげています。
また、同社は地元企業やクリエイターとのプロモーションを積極的に実施しています。例えば、地元の不動産屋や理髪店、小学生切り絵クリエイターとコラボし、SNSアカウントを活用したプレゼント企画や、限定デザインの商品の販売などを行った実績があります。
■シャープ
自動調理鍋「SHARP ヘルシオ ホットクック」の4コママンガを、
インフルエンサー漫画家として活躍されているぴよととなつきさんが制作。
ぴよととなつきさんの実体験マンガ「ピヨトト家のホットクック!」と、
Xで募集した「みんなのホットクックストーリー」マンガを特設ページで連載しています。
ホットクックユーザーの方々も参加型のキャンペーンということで、購入後の体験価値向上に貢献しています。
同時に、ホットクックが気になっていたが未購入の層に向けては、同商品のリアルな活用イメージを持ってもらえるような取り組みとなっています。
価格競争は、資本力の高い大手企業にこそ有利なフィールドです。中小企業やEC事業者がそこで戦うことは、利益を削るだけでなく、ブランドとしての価値を見失うリスクもあります。
しかし、顧客体験価値を高めることで、価格よりも「体験」で選ばれるブランドになることができます。
・誰に向けてのブランドかを明確にする
・一貫したブランド体験を設計する
・接点を緻密にデザインする
・顧客との関係性を育てる
これらをブランド戦略と連動させることで、「値下げしなくても売れる」仕組みが生まれます。
顧客体験価値こそが、価格競争に巻き込まれないための最良の戦略です。次に手を打つべきは、価格ではなく、「体験」です。
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