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ファンマーケティングとファンベースマーケティングの違いとは?企業が知るべき本質と使い分け

なぜ今、“ファン”が注目されるのか

かつては、広告費を投下すれば一定の認知と購買が生まれる時代でした。しかし現在は、生活者の価値観が多様化し、情報の主導権は企業から個人へと移っています。SNSやレビューサイト、コミュニティの中で交わされる“生の声”が、企業のブランドイメージや売上に直接的な影響を与えるようになりました。

こうした背景の中で、「ファン」という存在が改めて注目されています。単なる顧客ではなく、ブランドの価値観に共感し、自発的に語り、広め、支えてくれる存在。企業成長のエンジンとして、ファンの力が無視できなくなっているのです。

その流れの中でよく聞かれるようになったのが、「ファンマーケティング」「ファンベースマーケティング」という言葉です。一見すると似た概念に見えますが、実際には思想もアプローチも異なります。この違いを曖昧にしたまま施策を打つと、KPIがブレたり、社内で評価されにくくなったりするケースも少なくありません。

本記事では、両者の違いを整理し、企業がフェーズに応じてどう使い分けるべきかを解説します。

ファンマーケティングとは何か

ファンマーケティングとは、共感者を増やし、ブランドの認知・共感・売上を拡大していくためのマーケティング活動全般を指します。新規顧客やライトファンも含め、できるだけ多くの人をブランドの世界観に巻き込み、関係性をつくることが目的です。

特徴は「拡大志向」にあります。どれだけ多くの人に届いたか、どれだけ話題になったか、どれだけコミュニティが広がったかが重要な評価軸になります。

代表的なKPIとしては、以下のような指標が使われます。

  • SNSのフォロワー数、拡散数、エンゲージメント率
  • UGC(ユーザー生成コンテンツ)の投稿数
  • キャンペーン参加者数、コミュニティ登録者数

主な手法には、SNSキャンペーン、アンバサダー施策、キャラクターやIPとのコラボ、オンラインコミュニティの立ち上げなどがあります。いずれも「企業からファンへ働きかける」設計になりやすいのが特徴です。

言い換えれば、ファンマーケティングは“入口を広げる活動”です。ブランドの存在を知ってもらい、興味を持ってもらい、最初の一歩を踏み出してもらうための仕組みづくりだといえるでしょう。

ファンベースマーケティングとは何か

一方で、ファンベースマーケティングは、既存ファンの「好意・共感・期待」を起点に、長く応援され続けるブランドをつくるための考え方です。マーケターのさとなお(佐藤尚之)氏が提唱した「ファンベース」という思想を起点に、近年、多くの企業に広がっています。

※参考:今、企業活動を「ファンベース」にシフトすべき理由(https://dentsu-ho.com/articles/8460)

こちらの特徴は「長期志向」です。短期的な売上や話題性よりも、ファンとの信頼関係や感情的なつながりをどう育てていくかが重視されます。

KPIも、拡散や数ではなく“深さ”を測る指標が中心になります。

  • NPS(顧客推奨度)
  • 継続率、リピート率
  • LTV(顧客生涯価値)
  • コミュニティ内の活性度や参加頻度

具体的な活動としては、ファンインタビューの実施、ブランドの価値観や裏側の発信、ファンとの共創プロジェクト、クローズドなコミュニティ運営などが挙げられます。

ポイントは、「今いるファンを大切にする」という思想です。企業が主導するのではなく、ファンの感情や声に耳を傾け、寄り添いながらブランドを一緒につくっていく姿勢が求められます。

両者の違いを比較する

ここで、ファンマーケティングとファンベースマーケティングの違いを確認しておきましょう。

①目的の違い


ファンマーケティングは、ファンの“数”を増やすことが主目的です。それに対し、ファンベースマーケティングは、ファンの“熱量”を深めることが主目的です。

②時間軸の違い


ファンマーケティングは、短期から中期で成果が見えやすい施策が中心です。ファンベースマーケティングは、年単位での積み重ねを前提とした長期的な取り組みになります。

③スタンスの違い


ファンマーケティングは、企業からファンへの働きかけが中心です。ファンベースマーケティングは、ファンの感情や行動を起点とした寄り添い型のアプローチです。

④KPIの違い


前者は、拡散・成長・到達といった「量」の指標を指すものであり、後者は、継続・信頼・関係性といった「質」の指標が中心です。
ここで重要なのは、どちらが優れているかという議論は本質的ではないことです。重要なのは、「今のブランドはどのフェーズにあるのか」という視点です。

各アプローチが活きるケース

ファンマーケティングが効果を発揮しやすいのは、ブランドの認知を広げたいタイミングです。例えば、新商品のローンチや新規事業の立ち上げなど、多くのライト層にリーチしたい場合には、SNS漫画やコラボキャンペーン、アンバサダー施策が有効です。話題性と参加のハードルの低さが、裾野を広げる力になります。

家電メーカーのバルミューダは、独自の世界観を持つ新興家電ブランドです。同社は公式サイトで製品開発やブランドの思想についてのストーリーテリングを行う、ファンの感想を公式SNSで二次拡散するなどの施策を行いました。これにより、デザインと思想への共感を軸にコミュニティを形成することに成功し、 「高いけど欲しい家電」という独自ポジションを確立しています。

一方、ファンベースマーケティングが真価を発揮するのは、すでに一定数のロイヤル顧客が存在する企業です。離脱率が課題になっている場合や、価格競争から脱却したい場合には、ファンとの対話や共創がブランドの“意味”を強化します。ファンインタビューやクローズドコミュニティでの交流、価値観の発信などは、関係性の質を高める施策といえるでしょう。

カフェチェーンのコメダ珈琲は、2023年にファンのコミュニティサイト「さんかく屋根の下」を開設。ファンが参加できるクイズや投票、グッズへの意見、イベントレポートなどを掲載しています。ファン同士の交流も可能であり、コミュニケーションを深められる場所となっています。

段階別に考える最適な選択

スタートアップや新規ブランドの段階では、まず存在を知ってもらうことが最優先です。このフェーズでは、ファンマーケティングを中心に据え、認知と裾野の拡大を目指すのが合理的です。

成長フェーズに入り、リピーターや常連顧客が増えてきた段階では、徐々にファンベースマーケティングへと軸足を移していきます。熱量の高い層を理解し、その声をブランドづくりに反映させることで、競合との差別化が生まれます。

成熟ブランドの場合は、ファンベースを中心に据え、新規獲得施策は必要最低限に抑える選択も現実的です。ロイヤル層の信頼を維持することが、長期的な企業価値につながるからです。

このように「段階で使い分ける」という考え方を社内で共有すると、施策の評価軸や予算配分についても合意形成がしやすくなります。

まとめ:ファンを「増やす」と「育てる」を両輪に

ファンマーケティングは、ファンの“数”を増やすための活動です。その一方で、ファンベースマーケティングは、ファンの“熱量”を育てるための思想です。

両者は対立する概念ではなく、ブランドのフェーズや目的に応じて使い分けるべきものです。まずは今の自社ブランドが、「広げるべき段階」なのか、「深めるべき段階」なのかの棚卸しをしてみることが重要です。

最終的に目指すべきゴールは共通しています。それは、「長く応援されるブランド」であること。ファンを増やし、ファンを育て、その両輪を回し続けることが、企業価値を持続的に高める最大の戦略だといえるでしょう。

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